社長は持家も賃貸もNO?社宅の圧倒的な優位性の解説

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◆持家・賃貸と比較する社宅の圧倒的な優位性

会社の社宅に住んだ経験がある方は意外と多いかと思います。

大手企業であれば役員には役員社宅、社員には社員社宅、そして従業員住居用としての社員寮などが完備されているケースは珍しくありません。

しかし、この社宅制度は会社の大小に関わらず全ての法人が活用する事が可能な点をご存じでしたでしょうか。

住居費は毎月の支出に限らず人生においてかなり大きなウエイトを占める支出です。

今回は社宅制度の仕組みと社宅の利点、欠点について確認していきましょう。

目次

◆持家と賃貸は将来的にどちらがお得なのか?

持家と賃貸は将来的にどちらがお得なのか?

このような「持家派」「賃貸派」を比較する話題は、いつの時代であってもテレビや雑誌等で話題にあがる永遠のテーマであるのは間違いないじゃろう。

持家派の意見としては「住宅ローン」「固定資産税」を支払ってでも「土地」「家(建物)」いう資産が残ると主張するのが一般的じゃ。

建物の価値は減価償却の概念で考えたとすると徐々に価値は減少し最終的にはゼロとなる訳じゃが、最悪でも戸建て住宅の場合は確かに土地という資産が残る。

対して、賃貸派は毎月の賃料負担はあるものの、「固定資産税」や定期的に発生する「リフォーム費用」がかからない為、最終的な負担総額が少なくて済むと主張するのが一般的じゃ。

実際、子供たちが巣立っていった後は、必要以上の大きさの家を保持している老夫婦にかかる住宅の維持費は大きな負担となる。

このような議論は、金利状況や土地の資産価値の変遷など時代によっても状況が変化することから永遠に答えのないテーマと言えそうじゃ。

しかし、これから社長業に就く事を検討している方であれば、明らかに有利な制度を会社という法人組織を用いて構築していく事も可能になってくる。

持家派でも賃貸派でもない形、そう社宅制度を活用する「社宅派」というスタイルじゃ。

今回は、経営者が会社の「福利厚生」として用いることが可能となる「社宅制度」の仕組み付いて確認していくとしよう。

【今回覚えておきたいポイント!】
※経営者は持家派・賃貸派・社宅派の3択から選択が可能
※社宅制度を活用し法人で資産を守る

◆持家は誰の資産なのか?

ロバートキヨサキ氏の有名な書籍である「金持ち父さん貧乏父さん」では、個人が住居用として購入する持家は「負債」であると金持ち父さんの書籍シリーズを通じて度々解説しております。

この理由はとてもシンプルで、自分のポケット(財布)からお金を奪っていくものは負債、自分のポケットにお金を入れてくれるものが資産であると定義している為です。

誤解のないように補足しておくと、仮に持家であっても収入を生み出している持家であれば、これは「資産」に変化します。

一般的に思われている個人用の不動産物件は毎月のローンだけでなく固定資産税も発生します。

この一つの住宅から毎月収入を得ているのは、住宅ローンの返済を受けている「銀行」と、物件が存在する限り固定資産税を受け続ける「政府」です。

ですから、銀行や政府から見てみると、個人の持ち家は確かに自分たちのポケットに収入をもたらすことから「資産」であると言えます。

ロバートキヨサキ氏が説明しているのは、「持家は全て資産である」という銀行マンの営業トークに対し、それは「誰の資産であるか?」という説明を営業マンがしていない点が問題であるという事です。

銀行や政府にとって個人の住宅は毎月収入をもたらす優良な資産となり得ますから「持家は資産ですよ」という営業トークに嘘偽りは一切ないのです。

誰かの財布に収入をもたらす資産は、他の誰かにとっては負債となっていなければいけません。

経営の世界では、決算書の「貸借対照表」の中に資産と負債が記帳され、その額は必ず等しい額となります。

経営者を目指す方は、この資産の所有者を確認する簡単な方法を貸借対照表から把握する事ができます。

◆社宅の家賃は地域の相場価格よりも圧倒的に安い

話が少しそれてしまいましたが、持家と賃貸以上にあきらかに有利であると言える社宅制度の構築に話を戻します。

社宅とは会社が保有する不動産物件、もしくは会社が借り上げている賃貸物件などを社員に相場よりも安い費用で貸し与える「福利厚生住宅」の事です。

中小企業では社宅制度を導入している企業はそう多くありませんが、大手企業にお勤めの方であれば既に社宅にお住いの方もいらっしゃるでしょう。

そして、この社宅の家賃は地域の相場価格よりも圧倒的に安い賃貸価格となっていることもご存じのはずです。

◆社宅制度を導入し福利厚生の充実を図る

社宅を含めた福利厚生の充実は企業に勤める社員にとっては大きな魅力であり、モチベーションの維持にも繋がります。

尚、この社宅制度は「就業規則」「社内規定」「福利厚生規定」に定める事で、どのような会社でも社宅制度を導入する事が可能です。

法人の形態は株式会社でも合同会社でも構いません。(個人事業主は導入できません)

また、社員が少数、もしくは一人株式会社であっても社宅制度を活用する事は可能です。

【ポイント!】
※社宅とは法人が役員・社員に提供する福利厚生住宅のこと
※社宅制度は法人であれば規模を問わず導入可能

◆住居費は大きなウエイトを占める支出

住居費は人生の支出においてかなり大きなウエイトを占める支出です。

そして、この大きな支出となる住居費を会社という法人を用いて節税対策に活用できるのが経営者のメリットであると言えます。

但し、社長が社宅制度を利用する場合は、社員とは異なり「役員社宅」と呼ばれる扱いとなるため、「一定の規制」がかけられております。

ですから、自分の会社を活用して役員社宅制度を導入する場合は、「国税庁」が定める役員社宅規定を把握しておく事が大切です。

◆役員社宅を経費算入する3つの基準

社長業を始める方が自分が住む住居に対する社宅制度の導入を検討する場合、役員の社宅家賃は国税庁が規定する3つの基準に基づいて経費算入可能額を算出する事になります。

尚、この3つの基準とは以下の通りです。

【役員社宅を経費算入する3つの基準】
①小規模住宅の場合
②小規模住宅以外の役員社宅
③役員の豪華社宅

それぞれの基準の細かい解説は、以前私が執筆した役員社宅の関する記事をご参照ください。

以前執筆した記事の中でも解説しておりますが、役員社宅は社長の持ち家を会社が借り上げてから社長に改めて貸す借り上げ社宅方式と、会社で不動産を購入し、会社所有物件を社長の役員社宅とする2つの方法があります。

どちらも社長としては大きなメリットを受ける事ができますが、一人社長会社などの場合は、オーナー社長でもある事から節税面も考慮すると会社所有物件を社長の役員社宅とするケースの方が節税効果は圧倒的に高くなります。

◆会社所有物件を社長の役員社宅とする利点

会社所有物件を社長の役員社宅とする利点は、「固定資産税」「修繕費」などの住宅維持費を全て会社の「経費」として支払う事ができる点にあります。

社長が社長名義の持家やマンションを持つ場合、その物件の固定資産税や修繕費は当然ながら不動産の登記簿謄本上の所有者である社長個人で負担する事になります。

これらの諸費用の支払いは、社長の手取り給与から支払う事になりますので大きな負担となってくる可能性があります。

オーナー社長の場合は、社長個人の財布と法人というもう一人の財布を駆使しして資金や資産を管理する能力が求められます。

仮に同じ額の売り上げがあったとしても、手元に残る資金は節税知識の有無で大きく異なる世界です。

多くの企業が多額の報酬を支払ってでも会計士や税理士を雇うのは、それ以上のメリットを期待しての事であることは言うまでもありません。

社長個人の財布からの支出は極力控え、老後にできる限りの現金を残す事を考えた場合、持家よりも賃貸よりも、やはり福利厚生費として経費化できる社宅を選択するのが最良の選択肢と言えるでしょう。

◆法人を活用して資産を守る

最後に多くの経営者が実践している法人を活用して資産を守るという考え方について触れておきたいと思います。

小規模会社の多くの社長は、会社という法人組織の「連帯保証人」としての立場も兼任しております。

ですから会社が倒産した場合、社長個人の持ち家が「抵当物件」として差し押さえにあったり「任意売却」、もしくは最悪の場合は「競売」にかけられたりして現金化され回収されます。

しかし、経営者によっては大きな収益を毎年あげながらも個人としての資産をほとんど保有していない経営者も多くいます。

これは、個人の資産は簡単に回収されますが、法人という「有限責任組織」を活用する事で法に則った資産防衛を行っている為です。

その為、経験を積んだ経営者ほど複数の法人組織や資産管理会社を活用し「節税対策」「相続対策」を行っております。

法人は「法の人」と書きますが、個人と同じく法人単体で所得税や住民税を納める法的人格を所持する営利組織です。

営利組織である以上、営利を目的とした営業活動を行う事が基本概念にありますが、「資産防衛」という概念で法人を活用できるようになる事が経営者の重要な課題であると言えるでしょう。